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骨粗鬆症治療の考え方

骨粗鬆症の原因

 

骨粗鬆症は、その原因によって大きく2つのタイプに分けられます。
1つめは、おもに加齢によって引き起こされるタイプです。これを「原発性骨粗鬆症」といい、骨粗鬆症の多くはこのタイプです。
2つめは、病気や薬の影響で二次的に起こるタイプで、これを「続発性骨粗鬆症」といいます。
続発性骨粗鬆症の場合、まずは原因となる病気の治療や、服用している薬の中止・減量などを検討しなければいけません。そのため、骨粗鬆症が疑われる場合には、どのような原因で発症しているのかを調べ、原発性と続発性との判別を行う必要があります

 

原発性骨粗鬆症

原因となる病気などがなく、加齢や閉経にともなって引き起こされる骨粗鬆症です。
男性にもみられますが、閉経による女性ホルモンの分泌低下が骨密度を低下させるため、特に女性に多くなります。
こうした生理的な体の変化に加え、遺伝的要因や栄養不良、体を動かさずに過ごすといった生活習慣も、骨粗鬆症の発症に大きく関係していることが分かっています。

@加齢

女性の骨密度は18歳くらいでピークに達します。そののち40歳代半ばまではほぼ一定ですが、 50歳前後から急速に低下していきます。骨をつくるのに必要なカルシウムは、腸から吸収されて骨に取り込まれますが、年を取ると腸からのカルシウム吸収が悪くなってしまうのも骨密度低下の原因の1つです。

A更年期と閉経

女性の場合は閉経期を迎えて女性ホルモンの分泌が低下しますと急激に骨密度が減り、同年代の男性に比べて骨密度が低くなります。
女性ホルモンの減少が主な原因となっている骨粗鬆症に対しては、女性ホルモンやそれに似た作用のある薬、骨密度を増やす薬などが用いられます。

Bダイエット

ダイエットによる栄養不足は、骨粗鬆症の原因の1つとなります。とくに成長期は丈夫な骨をつくる大事な時期ですので、無理なダイエットは将来の骨密度に悪影響を与えます。
成長期にはカルシウムを十分に摂り、他の栄養素もバランスよく摂取するなど、よい食生活の習慣を保つことで、骨密度を高く保つことができます。

 

続発性骨粗鬆症

特定の病気や、服用している薬が原因となって骨強度が低下する骨粗鬆症です。
原因となる病気としては、副甲状腺機能亢進症などの内分泌疾患、関節リウマチのほか、動脈硬化やCKD(慢性腎臓病)、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、糖尿病などの生活習慣病で頻度が高いとされています。
これらの病気では、骨代謝に影響を及ぼすホルモンが不足したり、骨形成に必要な細胞などに異常が起こったりして骨量が減るものもありますが、骨の中に骨質を劣化させる物質が増えて骨がもろくなってしまうものもあります。
薬の副作用による骨粗鬆症では、代表的なものにはステロイド薬の長期服用があります。

@生活習慣病関連
 骨粗鬆症

生活習慣病はご存知のとおり、食習慣や運動不足などのライフスタイルをおもな原因として起こる病気です。高血圧や脂質異常症、糖尿病などがその代表格として知られており、最近ではCOPD(慢性閉塞性肺疾患)や、成人の8人に1人が発症していると言われるCKD(慢性腎臓病)なども注目されているところです。中高年になると、「生活習慣病と骨粗鬆症の両方を治療中」という人もおられるでしょう。この2つの病気に関連があると考える人は少ないかもしれませんが、最近では、生活習慣病が骨代謝に影響を及ぼすことが明らかとなって来ています。なかでも糖尿病とCKDは、骨粗鬆症と密接な関連があるとして注目されています。
こうした生活習慣病関連骨粗鬆症では、骨密度が正常に保たれているケースもあり、それでも骨折を生じやすいのは骨質劣化の関与が大きいと考えられています。

Aステロイド性
 骨粗鬆症

薬による続発性骨粗鬆症のうち、代表的なものがステロイド性骨粗鬆症です。
ステロイド薬の投与開始後、3ヵ月以内で骨への影響が現れ、長期間使用している方の50%で骨粗鬆症を発症しているという報告もあるほどです。
 
ステロイド薬を長期使用する病気では、関節リウマチや気管支喘息、膠原病をはじめとする自己免疫疾患などが挙げられます。

 

これらの病気では、薬の影響だけでなく、例えば関節リウマチでは骨や軟骨が破壊されるように、病気そのものが骨に影響を及ぼしているケースも少なくありません。
 
ステロイド性骨粗鬆症は骨折リスクが高いため、原発性骨粗鬆症の場合よりも、骨密度が高いうちから治療を開始することが推奨されています。

検査と診断

骨密度の測定

骨密度とは、骨の強さを判定するための尺度の1つです。骨密度の測定法には次のようなものがあります

  • DXA(デキサ)法;エネルギーの低い2種類のX線を使って測定。全身のほとんどの骨を測ることができます。腰の骨(腰椎)や太もものつけ根(大腿骨近位部)の骨密度を正確に計測できます。
  • 超音波法;かかとやすねの骨に超音波をあてて測定します。
  • MD(エムディ)法;X線を使って、手の骨と厚さの異なるアルミニウム板とを同時に撮影し、骨とアルミニウムの濃度を比べることによって測定します。

これらの測定法のうち、DXA法が体のあらゆる部位の骨密度を最も正確に測定できます。当院ではDXA法を使用して、腰椎と大腿骨近位部の骨密度を測定した結果をもとに、それぞれの患者様に適した治療法を選択しております。

 

レントゲン検査

主に背骨(胸椎や腰椎)のX線写真を撮り、骨折や変形の有無、骨粗鬆症の程度を確認します。骨粗鬆症と他の病気とを区別するためにも必要な検査です。

 

血液検査・尿検査

骨代謝マーカーという検査により、骨の新陳代謝の速度を知ることができます。骨代謝マーカーは血液検査、尿検査によって測定されます。骨吸収を示す骨代謝マーカーの高い人は骨密度の低下速度が速いことから、骨密度の値にかかわらず骨折の危険性が高くなっています。
この検査は、骨粗しょう症を他の病気と区別するためにも行われます。

 

診断の基準

骨密度と骨のもろさ、転倒やちょっとした衝撃で生じた骨折「脆弱性(ぜいじゃくせい)骨折」があるかどうかの3つが重要です。脆弱性骨折には、本人が自覚していない間に生じる骨折もあり、診断のためにはレントゲン検査が必要となります。

 

骨密度の基準

YAMの80%以上

正常

YAMの70〜80%

骨量減少

YAMの70%未満

骨粗鬆症

 

レントゲン検査の結果

背骨(胸椎・腰椎)のX線写真で、骨粗鬆症化や脆弱性骨折がはっきりと見られれば骨粗鬆症です。骨粗鬆症化が疑われるという程度の場合は、骨量減少という診断になります。

 

骨粗鬆症の治療

骨粗鬆症の発病には、加齢や閉経以外にも食事や運動の習慣などが深く関わっています。そのため骨の生活習慣病とも呼ばれ、食事療法や運動療法も骨粗鬆症の予防には欠かせません。しかし、骨粗鬆症と診断された場合には薬が治療の中心となります。

 

骨粗鬆症治療薬の種類
  1. 腸管からのカルシウムの吸収を促進し、体内のカルシウム量を増やす薬=活性型ビタミンD3製剤
  2. 骨の形成を促進する薬=活性型ビタミンD3製剤、ビタミンK2製剤、テリパラチド(副甲状腺ホルモン)
  3. 骨吸収を抑制する薬=女性ホルモン製剤(エストロゲン)、ビスフォスフォネート製剤、SERM(塩酸ラロキシフェン)、カルシトニン製剤


骨粗鬆症の治療薬にはそれぞれ特性があり、薬によって得意とする部位や症状が異なります。よって、それぞれの症状をよく考え、適切な種類の治療薬を選択することが重要です。

 

骨粗鬆症の治療薬は、上記の他にも次々と新しいタイプの薬が登場しています。
たとえば、新しい骨をつくる骨芽細胞を活性化させ、骨強度を高める「骨形成促進薬/テリパラチド(副甲状腺ホルモン)」は、骨密度が非常に低いなど重症の患者さんに適した薬です。現在、1日1回患者さんが自分で注射をする皮下注射剤と、週1回医療機関で皮下注射してもらうタイプとがあります。
既存の種類では、SERM(塩酸ラロキシフェン)や活性型ビタミンD3 製剤で新しい薬が登場するなど、薬物治療の選択肢が増えたといえるでしょう。
そんな中、骨粗鬆症治療においてはきちんとした服用を継続することが難しく、治療開始後1年で、患者さんの5割近くがきちんと薬を服用出来ていないというデータがあります。その原因はさまざまですが、少しでも患者さんが服用しやすくなるように、投与間隔や剤型に工夫が加えられた薬の開発も進んでいます。
たとえば、ビスフォスフォネート製剤ではこれまで主流だった週1回服用に加え、4週1回製剤(錠剤・点滴投与)が開発されました。さらには、高齢者では錠剤が飲みにくい問題に配慮した、経口ゼリー製剤も登場しています。 当院では検査結果を詳細に検討して、それぞれの患者様に合った治療薬を選択しております。

 


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